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Day18 その1 夜明けのトラブル

Posted by on 2011/02/07
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今日のルート



今日はまずスプリングフィールドという比較的大きな街を抜ける。いつものように200kmを進むと、次のインディアナ州の手前ぐらいまで行けるはずであった。しかし、この日は50kmしか進めなかった。この日僕たちは、とんでもないトラブルにあったのである。

夜明け



この日は朝3時半にモーテルを出た。いつものように夜明けまでは数時間あり、辺りは暗かった。ジャクソンビルの街を出て、しばらく走ると州道106号線にたどり着いた。最初に目指すスプリングフィールドという街までは、その106号線をまっすぐ走ればよかった。
その道のすぐ横にはインターステートハイウェイが通っていた。大きなトレーラーの走る音がこっちの道まで響いていた。
夜明け前までは車も少なく、とても走りやすかった。なにより、すぐ横にハイウェイがあるので車はそっちを走っているはずだった。



そこは完全に田舎道だった。真横には線路が走っていて周りはずっと畑だった。
ところが、空が明るくなり始めると意外にも車の量が増えて来たのである。それはいわゆる通勤ラッシュだった。どうやら僕らの向かっているスプリングフィールドは思っていたよりも大きな街のようで、そこで働いている人が一斉にその街を目指していたのだった。
朝の直線を走る車のスピードは尋常ではなかった。にもかかわらず僕らの走るその道には最悪なことに路肩が全く無かった。
いつもの眠気なんかなくて、僕らは緊張しながらできるだけ道路の端ギリギリを走り続けた。
ところが後ろでバキッという音がしたのである。何かが道路の上すれすれで僕の横を飛んでいった。そして、車は僕の自転車のカバンにも少し触れたかと思うと、少し前に急停車したのである。
僕は最悪の事態を想像して凄く怖くなった。

追突事故

僕は、自転車を道端に放り出しM女史の元へと駆けよった。

「大丈夫か!!」

M女史は道端の土の上に投げ出されしばらく呆然としていた。そしてなんとか状態を起こし、

「大丈夫」

と答えたのである。
僕はとてもホッとした。正直、意識を失ったり大怪我をしているところを想像した。でも、奇跡的に意識もあったし動くこともできるようだった。
車に乗っていたのは女の人で、車から降りてくるやいなや、

「ごめんなさい。大丈夫?」

を仕切りに繰り返していた。
何故かもう一人の女性がその場にいた。その人は今から仕事に向かう途中の警官で、まさにその事故を目撃したようであった。
そんなわけで、その後は話はスムーズに進み、あっという間にパトカーと救急車がやってきた。その場には警官やレスキュー隊員などが十数名も集まっていた。その頃には、M女史も落ち着きを取り戻しつつあった。
一体何があったのか、現場検証やら事情聴取やらが始まった。
その車の女性は携帯電話で話をしながら運転していたようである。そして、僕らのことは全く見えていなかったということだった。とにかく一部始終マジ誤りであったが、M女史が動けるぐらいには無事である事がわかるとホッとしたようだった。
一方、いったい僕らはこんな時間に何をしていたんだ、という話になった。

「ニューヨークへ行くところです」

一同、頭の上にびっくりマークが浮かんだ。ワオとか感嘆の声をあげ、遠くで別の調べ物をしていた警官を呼び戻し彼らの間で伝言ゲームが始まった。
しばらく僕らは質問攻めにあった。いったいどこから来たのか、いつから走っているのか、一日どれぐらい走るのか…
そんな質問に受け答えしている間、M女史はある程度体が無事に動くことがわかり、むしろ自転車の方がどうなっているのか心配していた。
自転車は左後ろのカバンが完全に取れてぶっ飛んでいた。そして、下ハンがトップチューブの下まで回転していて、ほぼ逆さになっていた。見た目それ以外は大丈夫なようにも見えたが、とにかくM女史は早く自転車屋さんを見つけて修理をしてほしい衝動に駆られていた。こんな状態なのに早く先に進みたくて仕方なかったのだ。
しかし、レスキューのお兄さんは怪我がないかを仕切りに確認していた。

「痛い所はないか?」

すると、M女史は左の肋骨辺りが痛いという。でも大丈夫といってなんと救急車を帰してしまったのである。レスキューのお兄さんは最後まで心配してくれていた。
さて自転車はいったいどうしたものか?気が付くと荷台の付いた車に乗ったおじさんが現場に駆けつけていた。おそらくその人は女性の旦那さんか家族だと思われる。自転車は自転車屋さんまで責任をもって運んでくれるようであった。
自転車屋はどこにあるのか?という話になると、ほぼ全員がiPhoneを取り出し調べ始めた。今までも何度か見たがアメリカのiPhone普及率は凄まじいものがあった。

「このあたりだとバイクテックって店がいいな!」

バイクテック。何だか良さげな名前の店ではないか。
自転車が無事に店まで運ばれることがわかると、急にM女史は自分の体のことが心配になった。この先走るにしてもあと一週間は走るのだ。冷静に考えると何もないとしても病院には行っておくべきだろう。

「ごめんなさい。やっぱり気が変わったみたいです。レントゲンで検査したいそうです」

するとレスキューのお兄さんはひとつも嫌な顔などせず、もう一度救急車を呼んでくれたのである。見えない所まで行っていたはずの救急車は、何故か一瞬で戻ってきた。
そうしてM女史は担架に乗せられて病院へと運ばれたのであるが、それはこれから始まる悲劇いや喜劇の始まりだったのである。

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