僕たちはついにデンバーまでやってきた。しかし、昨日210kmほど走る予定が50kmほど手前で宿泊してしまった。今日、元々走る距離も220kmと長めだったので、ちょっと頑張らないと遅れは取り戻せそうにない。とにかく毎日200km程度を目指して行けるところまでいくしかない。
それからゴール地点がずれてしまったことで、この先全く下調べしてない場所にゴールすることになる。ゴールの街にはいったいどれぐらいモーテルがあるのだろうか。
道に関しては今日は下り基調である。しかし200km進んで500m下がる程度なので、実際はほぼ平地だろう。
今日も朝3時に出発する。標高もだいぶ低く、昨日までのような寒さはもう無かった。
デンバーの街も夜中なのでひっそりと静まりかえっていた。昨日はあんなにも走っていた車もほとんど走っていない。今のうちにデンバーを抜けてしまおう。そうして僕らは、ライトアップされた大きな教会、長い長いショッピングモール、大きな飛行場を横目にデンバーの街中を駆け抜けていった。
20kmほど走ると、ようやくビルなどの建物がなくなりだした。元々その辺りが昨日の本来のゴール予定地だったのだが、そのあたりには何もなかった。デンバーの真ん中で宿をとったのは正解だったかもしれない。
ただ一軒ポツンと住宅地の中にガスステーションがあった。夜明け直後だが開いているようなので僕らは少し早めの朝ごはんを食べることにした。
↑ガスステーション横で何かを売る青年。何を売っているかは不明
↑36号線に入ってすぐぐらいの地点
↑見渡す限りの畑地帯
↑地平線へ向かって進む
更にしばらく走ると、道は36号線に合流した。その道はグレートプレーンズと呼ばれる大平原の真ん中を、延々と東に向かう道だった。これから数日間、僕らはこの道をひたすら進むのだ。あたりは畑が地平線まで続いていた。
とにかく、景色はびっくりするぐらい変わりばえがなかった。街や村らしきものが全く無いことが、だいぶ先まで確認することができた。
さっきのガスステーションでもう少し何か買っておくべきだったかと後悔したが、戻るわけには行かず僕らは前に進むしかなかった。しかしラッキーなことに、その日は昼過ぎまで強烈な追い風だった。時速30kmオーバーぐらいでかなり距離を稼ぐことができた。
そんな変わりばえのない中に唯一変わったものがあった。草原の競馬場のようだった。しかし、その日は休みなのか閑散とした様子だった。
ペースは追い風でかなりよかったが、次の街まではかなりの距離があるようだった。途中、僕らは休憩してりんごを食べた。このりんごは三日前に買ったものだった。りんごはどちらかというと重いので、あまり長い間持っておきたいものではないのに、随分な距離を運んでしまった。そのりんごはとても美味しかった。
↑りんごを食べた後もとにかく平地、平地、平地・・
188kmの地点に、デンバーを出て初めての街があった。そこにあった売店に僕らは立ち寄った。
小さな村であるにも関わらず、そこは食料ならなんでも揃っていると思えるぐらい充実していた。肉、野菜、パンなど、スーパー並に物があった。フルーツ類も豊富で、その中にカットされたスイカが売っていたので僕らはそれを食べることにした。それはすごく甘くてみずみずしくて、僕らの喉の渇きを潤してくれた。
更に僕らは距離を稼ぎ、15時ごろには240km弱を走っていた。流石にそろそろ泊まるところが無いか探していると、モーテルの看板があるのを見つけた。
しかし、パッと見た感じ開いているのか怪しそうなので、向かいにあったガスステーションで聞いてみた。答えはもちろんオープンしてるよ、ということだったので急いで僕らはモーテルに戻ってみた。
最初受付が見当たらなかったのだが、モーテルに併設された食堂が受付も兼ねているようだった。食堂は店じまいの片付け中で、食堂のおばさんたち三人はもう帰る寸前だったようだ。僕らは駆け込みでそのモーテルに泊まることができた。ラッキーだった。
おばさん達が帰る寸前に、周りに何か食べ物を売ってる場所が無いか聞いたところ、少し手前に行くとフードショップとバーガーショップがあるという。バーガーショップは5時までだから急いだ方がいい。あと一時間もなかったので、僕らは先にバーガーショップへ行くことにした。
しかし、残念なことにバーガーショップは既に閉まっていたのだった。バーガーショップから出てきた男性になぜ閉まっているか聞いてみた。それは
という腑に落ちない答えだった。今は何時か聞くと
というが、じゃあなぜ閉まっているのかと改めて聞くと、
と埒のあかない会話になってしまった。
仕方なく僕らは隣の売店で食料を買うことにした。そこはところ狭しと商品が積まれた小さな売店だった。いつからその店にあるのか賞味期限もわからない食べ物を僕らは買うしかなかった。モーテルには電子レンジがなかったので、店の電子レンジを借りて食べ物を温めた。それをモーテルに持ち帰り食べた。その日の食料は最低で、このアメリカ横断で一番ひどかった。
ご飯を食べていると、大雨が振り出した。昼間の天気からは想像できないぐらいの急変ぶりだった。本当にタイミングよくモーテルに駆け込めてラッキーだった。その雨は一晩中降り続けていた。