今日はいよいよロッキー山脈を越えてデンバーへと進む。ロッキー山脈に属するその山は3400m。それさえ越えてしまえば後は一気に1500mぐらいまで下る。予定ではデンバーを通り抜けた210km辺りでモーテルを探す予定。
今日はいきなり登りが始まる。泊まったモーテルの場所は既に標高2000mを超えており、朝から寒いことが予想される。いつものように暗い中スタートしたのでは、寒いし景色も全く見えないだろうということで、今日は少し遅めの5時にスタートした。
スタートしてすぐ、次の街にたどり着いた。そこはこれから登る大きな峠の北側にある街で、スキー場がまわりにあるらしくペンションのような建物がいっぱいあった。その中に一軒自転車屋さん発見した。朝早くて開いてはなかった。ここにもマイクは電話してくれたのだろうか?
街を抜けると道はまっすぐ朝もやの中へと入っていく。それは雲の中に入っていくようで、それぐらいきれいに真っ白だった。
ふと横を見ると、大きな気球が膨らんでいた。今にも浮き上がりそうで、少し足を止め眺めていた。気球の空気を温めるガスバーナーの音がゴーッと聞こえてくる。そしてついに気球が浮き上がった。僕らはその気球に手をふった。
雲の中を抜けると、山へ向けての登りが始まった。登り口にはデンバー直進の標識があった。いよいよこの山を超えるとデンバーなのだ。
登り道は緩いが長かった。どんどん標高はあがり3000mを超えた。少し息が苦しい気がする。それに少しお腹もすいてきた。僕はあまりにヘロヘロなので持っていたハンバーガーを食べた。一方M女史は特に息が苦しいと言うこともなくひょいひょいと登っていった。ハンバーガーを食べて、僕も再び登り続けた。
標高3400m、長い登りが終わりやっと頂上についた。周りには何台か自転車を見かけた。やはりここにも自転車乗りがいた。他にも観光客がちらほらいた。僕らはその観光客の老夫婦にお願いして記念碑の前で写真を撮ってもらった。
3400m、そこは今回のアメリカ横断で一番標高が高い場所だった。そしてそこを超えることは、前半のつらい砂漠や荒野地帯の終わりを告げていた。頂上を後にして、いよいよ僕らはデンバーへと下っていった。
頂上からは、1500mぐらいまで一気に下る。車もぼちぼち走っていたが、道幅は広く走りやすかった。頂上まで登ってきた自転車乗り達も一緒になって下っていく。そこにはほんとにたくさんの自転車乗りがいた。
今まで毎日2000mを超えるか超えないかの場所を走り続けてきたが、下るのは一瞬だった。でも最高に気持ちがいい下りだった。
山のふもとの街へ近づくと道はだんだんと平坦になってきた。かなりお腹も減ってきたので、僕らは道の傍に自転車を停め、昨日チャイニーズレストランから持ち帰ったチャーハンを食べた。
ふもとの街は工事中があったり、自転車通行禁止の標識があったりで、デンバーまであと数キロにも関わらずなかなかたどり着くことができなかった。
山を下ったのは昼過ぎだったが、4時前になってやっと、僕らはデンバーの大きなビルが立ち並ぶ姿を見ることができたのだった。
デンバーはアメリカでは二番目ぐらいに大きな街らしい。街の端から端までは約50kmぐらいあった。元々今日のうちに街を抜けて、街の反対側でモーテルを探すつもりだったが、思いのほか時間がかかったので、街中で泊まるところを探すことにした。
街の中心部は大きなビルもあったが、大きな教会や美術館と思しき立派な建物がたくさんあった。
それから、通り道に比較的大きな自転車屋さんを発見した。僕らはちょうどいいので、ポンプを借りて空気を入れ直すことにした。するとM女史の自転車の後ろの空気圧が予想外に減っているのがわかった。二日ほど前に空気は入れたはずなので、店の人が言うにはスローパンクだろうということだった。僕の自転車も空気を入れて見たが、なんと僕の方も圧が低い。
そんなわけで、店の前でチューブ交換大会が始まったのであった。ついでに僕はデンバーで後ろのタイヤを交換するつもりだったので、新品に交換した。ちなみにM女史はマイクと別れる前に一度タイヤは交換していたので、ここではチューブだけ交換した。
更に僕らは貴重な時間を使ってしまった。僕らはモーテル探しを急ぐことにした。
自転車屋さんをあとにしてしばらく、一帯はダウンタウンで明らかに治安が悪そうな感じだった。足早にそのエリアを抜け、少しはまともそうなモーテルを見つけることができた。
入ってみると、そこは中華系のおばさんが受付をしていた。ランドリーはなかった。トラベラーズチェックは渋々受け取ってくれた。
ご飯は数百m先にあったセブンイレブンで調達した。大きな街なのに何も無いところに泊まってしまった。
まわりが薄暗くなったころ買い物を終えホテルに戻ると、入り口に何人かの黒人が屯していた。僕はそそくさと中に入り部屋へと戻った。
最後の最後、今日はいろんなことがあって本当に疲れた。明日に向けて僕らはすぐに眠りについた。