僕はビビリんちょである。恐怖を感じるとそれを避けようとしてしまう。そんな僕が何を思ったのかMTBなる乗り物を買ったのである。MTBって乗り物は山の中を走るだけ。その時MTBに怖ーい要素があるなどと想像だにしなかったのである。
MTBを買ったのは2007年の秋だった。何か新しい事を始めようと思い、M女史が昔MTBに乗っていたという話を聞いていたので、それならと安易な気持ちであった。
どんなバイクがいいかな?僕はM女史にバイク探しにつきあってもらった。MTBといえばサスペンションが付いてるのがかっこいいのだ!何も知らない僕は、後ろにも前にもたいそうなサスペンションが付いてるMTBを指差してみた。
えー?無しのがいいの?僕がカッチョええと思っていた後ろサスはどうやらM女史が行くような所では無用の長物らしかった。
その時はさらっと聞き流したが「担ぐ」の意味を僕は理解していなかったのである。
もう一軒、M女史にとあるバイクショップに連れていってもらった。そこには、オレンジ色の綺麗なフレームが飾られてあった。僕はそれをみた瞬間「これだ!」と思った。そうして、僕が買ったのがKLEINのAtitudeだったのである。
それから年に何回か、行く回数は少なかったがMTBに乗りに行くことがあった。最初にいったのは石ころがごろごろと転がるジープロードだった。MTBなんてのは山の中を走るだけだと高を括っていたのだが、僕はMTBはそんなに簡単に乗りこなせるものではないと思い知ったのである。とにかく石ころを乗り越えようとすると、自分の意思とは無関係な方向へとMTBは動く。バランスを崩して簡単にこける。こけない様に恐る恐る乗っていると更にこける。これはまともに乗れるようになるまでにずいぶんと時間がかかるに違いない。そう予感したのであった。
他にも六甲山など走りに行ったが、皆がガシガシと乗り越えて、あるいは下っていく場所を僕は怖くてMTBに乗れずにいた。こんなデコボコのところどうやって走ったらいいの?僕は走りに来るたびに思い悩んでいた。とにかくどんどん乗ってみるのが一番。そうなのかもしれないがなかなかそれが手ごわかった。それでも、最初のころよりは乗っていける場所も少しづつ増えていったのである。勇気を出して乗ってみて、乗って行けたときはとても嬉しかった。それに乗れてしまうと意外にこんなもんだったのか。そう思うこともあった。
そして2011年10月29日。前回に引き続きMTBで山に入った。今回向かう山は千町ヶ峰~段が峰~フトウガ峰、兵庫県の中北部に位置する山々だ。M女史とロードでもいつも一緒に走っているI氏とN氏の四人で山へと向う。
スタート地点に着くとそこに一台の車が停まっていた。ハイカーのおじさんだった。このあたりの山を制覇しながら、今日僕らと同じ山を登るようで、おじさんは一足先に山へと入って行った。僕らも直ぐにMTBを準備して山へと入っていく。
登山口は川の向こう側で、昔はあったであろう木の橋は流されてしまったのか跡形もなく、今は頑丈な鉄の橋が架かっていた。橋を渡ると、そこからはずっと担ぎ上げの区間だった。前の時もそうだが、正直MTBで山に入るとはいえ、ここまで担ぎまくるものだとは思っても見なかった。とにかく最初の山の頂上に着くまでは乗るところなど全くないのである。
そこにきて僕のMTBはどちらかというとちょっと重いようで、最初は元気だった僕もだんだんと歩くスピードは落ちヘッポコになっていく。ちょっとした段差を担ぎあげる時が大変で「よっこらしょ」っと言いながらじじぃさながらであった。そんなとき体勢をくずして後に倒れそうになる。2、3歩後ずさりして耐えたものの、
どうやら後にいたI氏の頭にタイヤがささったようである。前からは何やってんの!?と叫び声が。もう山の中は踏んだりけったりの状態だった。
この辺りで「そろそろ頂上?」などと言っていたが・・
そこから30分以上も担ぎは続くのであった
M女史の「そろそろ頂上かな」という偽情報からさらに半分ほど担ぎ上げは続き、僕らはやっと最初の頂上っぽいところにたどり着いた。そこで僕らは地図を広げ次に行く場所を確認した。向う方向はさらに上のようで、ほんの少しMTBに乗れたかと思ったが、再び担ぎ上げは続くのであった。いい加減肩が痛くてたまらなかった。
地図、ではなくカンニングペーパーを見てルート確認
前の方では先に頂上へと着いたメンバーの声が聞こえた。誰かと話をしているようだった。やっとのことで僕も追いついてみると、頂上にはさきほど駐車場で会ったハイカーのおじさんがいた。まさかと思ったが自転車を担いで登ってくるとき思っていなかったようで驚いた様子だった。「すごいなー」と言われると嬉しくてちょっと元気になった。
そこは千町ヶ峰(1141m)の頂上だった。周りの山々、眼下には小さく村や集落が見えた。山の上から眺める景色は最高だった。こんなに上まで登ってきたんだ。すごいなと思った。
千ヶ町峰の頂上にて、ハイカーのおじさんに撮ってもらう
そこからはいよいよMTBに乗っていける場所だった。よーしとばかりに走り出したのであるが見た目何も無さそうなところですっ転んでしまった。ひぃ、と思っているうちに前の3人は見えなくなってしまった。こんな時焦れば焦るほどなぜかどんどん乗りこなせなくなるもので、何度もタイヤをとられてバランスを崩して、フラフラしながら僕は前を追いかけた。なんとか調子を取り戻しつつあったころ道は舗装路へと出てしまった。あぁ、もうちょっと乗りたいのに。僕は残念で仕方がなかった。
しかし、今日のコースまだまだ前半。この先も乗れる場所はいっぱいあるはず。そう思い僕は皆と次の山へと向うべく舗装路を登っていった。
道の先にロッジが見えた。このロッジの横が山への入り口で、僕らは少しの休憩の後再び山の中へと入っていった。またまた担ぎ上げが続いた。肩が悲鳴を上げそうだった。段差を登るたびに足もパンパンになってくる。おなかもすいてきたぞ。頂上で何か食べよう。そんなことを考えながら登る。
そんなこんなで頂上にたどり着いた。段ヶ峰(1106m)だった。そこには他にもたくさんのハイカーが登ってきていた。景色を見ながらお昼を食べているようで、僕もそこで弁当を食べることにした。
山の頂上は回りに木も生えていなくて、ぐるりと360度が一望できる眺めのいい場所だった。そこから山の尾根沿いに幅20cmぐらいの獣道がずっと続いているのが見えた。次に向う山も先の方に見えていた。
ご飯を食べ終わると僕らは再び走り始めた。今度こそ皆と離れないように着いていきたい、そう思ったのであるがいつも通り初っ端でバランスを崩した瞬間に前は見えなくなっていた。そこからは前の人はここをどうやって乗って行ったんだろうという想像で突き進んでいく。こうやったら乗り越えていけるんだろうか?試行錯誤の繰り返しで、だいたいの場合において失敗することが多いものである。それでも何度かに一回の成功で、「おおっ、こうやったら乗れるんだ」という発見をする。
しかし獣道が終わり谷間へと下っていく道になると、僕にはどうやって乗っていいかわからない場所が現れた。まっすぐに下っている所は勢いで下っていけるが、くねくねとしたところはどんなライン取りをしていいかがわからなかった。そもそもライン取り以前に、思ったライン通りに走ることもままならないような場所で最初に曲がり損ねて、はい終了。そんな下りの途中からはなかなか乗りなおすのも難しく、しかたなく押して下る。そうこうしていると前の人たちとはどんどん離れていき、いつしか完全に独りになってしまったのであった。
そこは、ちょうど尾根と尾根の谷間の窪地だった。その窪地には水がたまっていて泥の沼地状態になっておりそれは先の方まで川のようになって続いていた。次はどっちへ向うのかと考えているとハイカーがその川のような沼地を渡ってやってきたのである。次はそっちかと思い、沼地を越えてみたもののどうも道らしい道は見つからないのであった。どうやら僕は道に迷ったようだった。とりあえず僕はその場で待ってみることにした。
しばらくすると「おーい」というI氏の声が聞こえてきた。僕はその声のする方向へと進んでいった。なんとその川だと思っていた所こそが次へ向う道だったのであるが、その川を避けて声のする方向へと突き進んだ僕が変な場所から現れたのでI氏には「何か変なところにおるー」と言われてしまったのであった。とにもかくにも山で迷う経験は初めてで、道がわからなくなるとほんとにどうしていいかわからなくなるもんだと思った。
そこから担いで担いで頂上に着くとN氏とM女史がお待ちかねであった。おそらく相当待っていたようでさすがに「遅いぃぃ」と言われてしまった。
やっと着いた頂上はフトウガ峰(1083m)だった。途中すれ違ったハイカーが先ほどの段ヶ峰へと登っていくのが見えた。よく聞くと「ヤッホー」と言っているようだったが、「あほー」にしか聞こえなくて何かおかしかった。
そこからの下り、今日の僕はビビリンちょ全開だった。乗れそうな場所も半分ほどしか乗れなかったのである。そうこうしているうちに道は乗っては下れないほどの激下りになった。さすがに皆も押して下っていった。その下りは半端なく急で気を抜くとMTBと一緒に数mほど転げ落ちそうであった。そんな中を前の3人はさくさくと下っていくのであるが、僕は一歩一歩慎重に下っていくのであった。それは僕にとって登りの担ぎより大変だった。
下に着くとまたもや3人は相当待っていたようで、M女史には「ほんとに何やってんのよ!」っと散々に言われたのであるが、とにもかくにも四人無事に山を降りてくることができたのであった。
こんな感じで僕はまだまだ山に入っても全然乗れなかったりする。初めての場所で四苦八苦しながらだが、それでも意外なところで乗りこなせたりすると「やった」と思う瞬間がある。それに多分MTBで転んだりするのは当たり前のことで、転んでも山の地面は優しく受け止めてくれる感じがする。今回もずいぶん転んだけれど、なにか山はふわっとした感じなのだ。だから、まだまだ時間はかかりそうだけど僕はまた山に来たいと思うのである。
ところで、今日のコース山を越えてスタートのちょうど反対側までやってきたのであった。I氏曰く「ここどこやねん!何でこんなとこに出て来るねん」といったようなことを叫んでいた気がする。スタートに戻るにはぐるーっと国道の峠道を迂回して、さらにスタートまでは激坂の登りが待っているのだった。僕ら四人は山を制覇したのもつかの間、その道をひた走り帰っていくのであった。
まいど。MMコンビ、こんなこともやってたんやね!嬉しい誤算。こっちも、久々にMTBもどき(何故か、VOGUEのフレームのMTB)を復活させます。来年早々には走れるようにしときます。また、お誘い遊ばせ。(^^♪(^^♪(^^♪