今日も36号線を東へと走る。昨日まではスタートとゴールで標高が500mほど下っていたが、今日からは標高はほとんどかわらない。相変わらず大地はうねっていて、アップダウンが続く。
朝3時、念のためレーパンを探しにモーテル前のガソリンスタンドへ行った。やはり落ちてはいなかった。ゴミ箱の蓋をあけてみた。臭かった。仕方なくベルビルの街を後にした。
走った距離はもう少しで3000kmになろうとしていた。明け方までの暗い間は相当眠かった。
今日も延々と東へと向かう。道路脇には街までの距離を示す看板が所々あり、1マイル毎に州境からの距離が書いた小さな標識がある。
1マイルは1.6kmなので、例えば50km先の街だと約31マイルだ。これを実は31kmなんだと自分に暗示をかけて走ると、不思議なことにすごく楽になった。なんてことはなかった。1.6kmは微妙に長く、街までのカウントダウンはなかなか終わらない。
東へと走るにつれ道の幅も少しづつ大きくなってきた。街は幹線道路沿いにすぐにあるのではなく、一度道を外れなければならなかった。いちいち幹線道路から外れたり戻ったりは結構面倒臭い。
36号は上り下りが別の車線になっていった。反対車線は延々と平らに見えるが、なぜか僕らの走っている車線はなぜかうねった道になっている。なぜこっちの道だけ波打った地面に作ったのか?僕らはカンザスの大地にやられ気味だった。
朝8時過ぎ僕らはメアリーズビルという街にたどり着いた。そこは綺麗な街並みで大きな教会があった。街には列車の駅があるようで、道路の下に見える線路には長い長い列車が走っていた。列車はときおりポーッと汽笛をならした。
この辺りから、ずっと線路は僕らの走る道の近くを通っていた。列車は意外にもかなりゆっくりしたスピードで走っているようだった。こっちは自転車なのにずっとそばで同じ列車の汽笛が聞こえることがあった。
いつしか列車は旅の友になり、僕らはそいつをトーマスと呼ぶことにした。トーマスは毎日僕らを汽笛で励ましてくれた。
この登りの向こうは下りではなかった!!
その後も道はゆるいアップダウンを延々と繰り返した。かと思っていたが、だんだんと道はダウンしなくなっている気がした。ゆるい登りの向こうはまた登り。登りの頂上が見えるが登ってみたらまた登り。次は下りますからと言われて登ってみるもまた登り。カンザスで僕らはダウンヒル詐欺の被害にあったのだった。近くでトーマスは笑っていた。
今日も気温はかなり上がってきた。昼過ぎまで走り続け、あまりの暑さに久々にアイスを食べることにする。今回選んだアイスは赤、黄、緑のネジネジアイスだった。またもM女史は顔をそむける。しかし味はなかなかおいしかった。ほんとに。
M女史はチョコサンドアイスを食べていた。普通にうまそうだった。
午後3時ごろハイアワサという街にたどり着いた。当初、今日はこのあたりで宿を探そうかと思っていたのだが、距離が200kmを超えていなかった。この辺り、街と街の間隔もそれほど長くなかったので僕らは200kmを超えるまで先へと進むことにした。
その時はなぜか妙に元気で「どんどん行くぜー」って感じだったので、なぜかその街ではどこにも立ち寄らずスルーしたのだった。大きなウォルマートが見えていたのだが寄っておけばよかったと後悔した。
40kmほどさらに進むと、トロイという街にたどり着いた。わざわざ幹線道路を降りてその街へと向かう。しかし、その街にはなんとなくモーテルがありそうな気配がなかった。見つけた車の修理屋さんで聞いてみた。
寂しい答えが響いた。
さらに10kmほど進む。街のPizza屋に聞いてみた。
なに?この辺りは「No Motel」って言うの流行りなの?でも、ちょうど喉が渇いていたのでコーラを買って喉を潤した。
さらに進むとセントヨーゼフまで8マイルという標識があった。その街は次の州、ミズーリ州の街だった。あれよあれよという間に東へと進んでいるうちに僕たちはほぼカンザスを抜けるところまで進んでいたのだった。セントヨーゼフは結構大きな街である。そこまで行けば確実にモーテルがあるだろう。僕らはそこまで走ることにした。
大きな街に近づくその道はかなりの交通量になっていた。たくさんの車が走る横を僕らはミズーリ州へ向かって走る。少し先に大きな橋が見える。僕らはその橋を目指した。
そこは大きな川が流れていた。ミズーリ川だ。そして橋の真ん中が州境だった。ついに僕らはカンザスを抜けミズーリ州に入った。今回は明るいうちに州境にたどり着けた。僕らはもちろん大きな川をバックに記念写真を撮った。
ミズーリ川をわたったら、すぐそこはセントヨーゼフの街だった。地図で見てもかなり大きそうな街であるが。橋を降りたその場所は倉庫のようなものが立ち並ぶだけの何も無い場所だった。その日は日曜日だからだろうか、人の気配も全く無かった。事前に調べた情報だと、このあたりに自転車屋さんがあることになっていた。あればチューブとか補充したいものはあるのだが、そんなものはまるで無さそうな雰囲気だった。それどころかそこは夜だと近づいてはならないヤバそうな雰囲気に思えた。僕らは明るいうちに早々と通り過ぎた。
少し走るとやっと一軒ファミレスがあったので中に入ってみる。客は一人もいないのにレジカウンターの中に従業員が4人もいた。モーテルについて聞くと、この前の道を進んだらあるよ。ということだった。
ちょっと進んでみた。モーテルは無かった。
ガスステーションがあったので聞いてみた。この前の道を進んだらあるよ。ということだった。ホントだろうか?
もうちょっと進んでみた。なぜか道はどんどんと登っていった。その道を登りきるやっとスーパーやら大きな店がいっぱいある場所に出た。どうやらこの辺りがセントヨーゼフの中心街らしい。
そして、そのすぐ先にモーテルが立ち並ぶ場所があった。今日もスーパー8モーテルを僕らは選択した。必須のランドリー完備のリッチモーテルだ。もちろんアイスサーバも設置してあった。モーテルの近くにスーパーはなかったが変わりにデニーズがあった。今日の晩ご飯はそこで食べることにした。
結局今日は気がつけば255kmも走っていた。モーテルにたどり着いたのも午後7時過ぎだった。さすがにくたくたになった僕らは、明日は少しだけ遅めに出発することにして眠りについたのであった。